この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
こんにちは
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がんべあです
今回も「エニアグラムの裏表」について考察します
取り上げるのは「この世界の片隅に」の主人公 北條(浦野)すず(ほうじょう すず/うらの すず)
「この世界の片隅に」は2016年劇場公開、片渕 須直監督の作品
【この世界の片隅に 予報】
「この世界の片隅に」は何度観ても感動できる作品…と言うか観れば観るほど感動が深くなっていく実に不思議な作品
まんが原作のこうの 史代先生と映画を作成した片渕 須直監督
二人のコラボから生み出された奇跡の作品だと思います
今回はこの素敵な物語の主人公すずさんをエニアグラムで分析していきます
エニアグラムの性格には裏表があり、困難に追い詰められて「表の性格」では対処ができなくなった時に「裏の性格」が現れると言う仮説があります
その仮定を検証します
【エニアグラムを全く知らないと言う方はこちらの記事をどうぞ】
※ネタバレありです ご注意を!
【北條(浦野)すず】(ほうじょう すず/うらの すず)
※今回のブログでは「すずさん」の表記に統一
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
すずさんの「表」と「裏」の性格
すずさん:(うちゃあ ぼーっとしとるけぇ じゃけぇ あの日のことも きっと昼間見た夢じゃったんに ちがいない)
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表のすずさんはタイプ4
タイプ4は現実から離れ「一人」で「夢」を追い求めようとする芸術家気質の性格
【タイプ4】(芸術家)の特徴
・美意識が高い、芸術家気質
・独自性を重んじる
・イメージ力があり空想にひたることが多い
・集団行動が苦手
・シャイで気が小さい
・共感能力が高く、弱者へのいたわりの気持ちが強い
・甘えん坊で寂しがりや
・建前がわからない
・気分転換や楽しむことがへた
・自意識過剰
・純粋で繊細で、傷つきやすい
・破滅的で自分を追いつめやすい
① 社会から引いており、自分の創造の世界にとどまる傾向
② できるだけシンプルで無駄を省いたライフスタイルを選択する
③ 自己表現のために、必要であればルールを破る
すずさん:「あはははは 若い 若い」
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裏のすずさんはタイプ9
タイプ9は夢よりも目の前の現実を他人と交わり合いながら地道に築き上げていくタイプ
表とは真逆の性格に変化しています
【タイプ9】(調停者)の特徴
【タイプ9の特徴】
・忍耐強い
・自己主張がしにくい
・変化を好まない
・のんびり屋さん(ですが、時折すごいパワーを発揮して行動します)
・自分自身の考えを持たず、周りに流されやすい
・分析や洞察は苦手
・闘いは嫌い(ですが、追い詰められると他のタイプのどれよりも攻撃的になります)
・仲間から疎外されるのが恐怖
・不器用
・無欲
・裏表がなく誠実
・優柔不断
・無自覚な行動が多い
・忘れっぽい
①「現実的で社交的、人と仕事をするのを好む」
②「人と付き合い、楽しい時間を過ごす事を好み、その為、重要な目標に集中しにくい傾向がある」
③「感情が爆発することがあるが、突然穏やかで温和な状態に戻る」
タイプ4w5と9w8は上図の通り、エニアグラムの正反対の位置にあり、表と裏の関係にあります
すずさんの性格が変わった訳
4w5のキャラクターは特定の集団に所属せず、旅する「遊牧民」であり、旅するために自分の望みを悟って行き先を決めます
しかし、内面に潜りすぎて現実を見失いがちであり、その認識には裏人格9w8が必要となります
タイプ4のキャラクターは「夢を追いかけ、自分の内側に向けて旅をし、自分の為に個性を表現しようとします」
すずさんは自分の中にある個性を表現する為の手段として「絵を描くこと」を趣味としていました
しかし嫁ぎ先の呉での現実にすずさんは戸惑います
その困難に対処する為に裏人格9w8となったのでしょう
9w8のキャラクターは周りの環境に合わせ、その状態を維持する為に闘う性格
裏人格へと変化する事で、表人格の時にはできなかった「周りとの関係」を築く事が可能となります
すずさんの成長
ただ、裏の性格はあくまでサブの性格、メインの性格に比べて性能が格段に落ちてしまいます
一時的に裏の性格に支えられながらも、抜本的な対策をしていく必要があります
抜本的な対策、それは「人が成長する」事
タイプ4は次の順番で成長していきます
①:自分の内面から外の世界、現実の中に飛び出す
②:現実の世界の中で楽しみを見つける
③:現実の中で楽しみながら何かを勉強する
④:勉強する事で力を身に付ける
⑤:身に付けた力を使って周りの人を助ける
これがエニアグラムにおけるすずさんの成長ルート
物語の中ですずさん(表:タイプ4)は上の順番に従った成長をしていきます
【第1段階の成長】
「現実の中に飛び出す」(タイプ1の良い所)
広島にいた時の子供時代「両親に守られ安心して自分の夢の中で生きていける生活」から飛び出し、呉での「厳しい現実の中で生きていく決意」をするすずさん
すずさん:「さよなら、さよなら広島…」
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現実の世界に飛び出し戸惑うすずさんを導くのは北条 周作(タイプ1)
【北條周作】(ほうじょう しゅうさく)
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周作:「なるほどのう… 過ぎたこと 選ばんかった道 みな覚めて終わった夢と変わりやせんな」
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この成長の段階ですずさんは周りの環境に適応する為、「裏」の性格へと変化します
【第2段階の成長】
「現実の中での楽しみを見つける」(タイプ7の良い所)
北条家で他人と共に生きる楽しさを見つける
周作:「のお、すずさん 気にしよったら ハゲはよけいに酷うなるで」
すずさん:「バレとりましたかぁ…」
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この時のすずさんは「裏面の性格」が全面に出ており、「表の性格」は消えそうになっています
忘れかけているすずさんの「表の性格」の存在を認め、引き出してくれる重要なキャラクターが白木リン
【白木リン】(タイプ7)
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リンさんの存在が無ければすずさんは裏面の性格に完全に取り込まれてしまい、正常な成長はできなかったと思います
【第3段階の成長】
「勉強する」(タイプ5の良い所)
主婦としての仕事(炊事洗濯・近所付き合い等)について、現実の中で生きていく為の勉強する
すずさん:「はあ…なるほど はあ
すみれ はこべら すぎな たんぽぽ かたばみ 鰯の干物 卯の花 馬鈴薯 おいも 小麦粉 梅干しの種
さつまいもを切りて 蒸す
(中略)
お昼ごはんの出来上がり」
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世の中で生きていく為に必要な事を学んでいくすずさんですが、その生活が壊されそう(壊される)になると突如として攻撃的になる所も見られます
すずさん:「ほいで今日に限って ホゲたくつ下履いとってんですか!」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
すずさん:「そんなん覚悟の上じゃないんかね 最後の一人まで戦うんじゃなかったんかね?」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
この怒りの表現はすずさんの裏面(9w8)の性格からきています
表面(4w5)の性格の時は怒りを直接表に出そうとはせず、深く心の中に溜め込もうとします
タイプ9w8は地道に他人との関係を平和に築いていこうとする一方、その平和が脅かされそうになった時には突然暴力的となり平和を脅かす存在と闘おうとします
しかしその行動は瞬間的なものであり、すぐに元の穏やかな性格に戻ります
①「現実的で社交的、人と仕事をするのを好む」
②「人と付き合い、楽しい時間を過ごす事を好み、その為、重要な目標に集中しにくい傾向がある」
③「感情が爆発することがあるが、突然穏やかで温和な状態に戻る」
先程述べた通り、この段階のすずさんは裏面の性格(9w8:安定している)の方が強く出ており、表の性格(4w5:夢を追う不安定さ)は薄れてきています
すずさん:「ああ どうもいけん 思うたように描けん」
哲(すずさんの幼馴染):「お前でもそんとな時あるんか?
…ひょっとして 久しぶりなんか? 絵描くのが…」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
裏面の性格(9w8)が強く出ているすずさんには何か息苦しさを感じます
リンさん(と遊廓の人達)との関係が無ければ、このままずすさんは裏面の性格に取り込まれてしまい、表面の性格の成長は止まってしまった事でしょう
「この世界の片隅に」中巻より ©Fumiyo Kouno 2006
りんさんやテルさん(リンさんの遊郭仲間)との触れ合いを通じて、すずさんは表の性格をかろうじて保ちながら成長していく事ができるのです
【第4段階の成長】
「力を付ける」(タイプ8の良い所)
勉強した事を実践し現実の中で生きていく実力を身に付けていく
すずさん:(うちも強うなりたいよ やさしう しぶとう なりたいよ この町の人らみたあに)
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知恵(タイプ5)を現実の力(タイプ8)に変えていく
すずさんは物語の中で「生きる為の手段」「生きる為の目的」など多くの事を「勉強」し、その知恵を土台に「力」強く成長していきます
径子(けいこ)(周作の姉):「こりゃあなんの行列かね?」
すずさん:「さあ? なんでもええですよ 何でも足らんのですけぇ」
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すずさん:「晴美さんはよう笑うてじゃし 晴美さんのことは 笑うて思い出してあげな思います この先ずっと うちは 笑顔の容れもんなんです」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
物語の最後では「精神的」にも「生活力的」にも力を付けてたくましくなった(タイプ8の良い所)すずさんの姿が描かれています
【第5段階(最終段階)の成長】
「人を助ける」(タイプ2の良い所)
そして「生きるための力」を身に着けたすずさんは第5段階(最後)の成長として「人のために尽くす」性格を身に着けます
すずさん:「広島のことも心配じゃけど 呉はうちが選んだ場所ですけえ… あれぇ?」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
すずさん:「この子は 最後のほうが…ええんじゃないですか?」
この世界の片隅に より © こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
広島で孤児を引き取り、育てようとするすずさん
誰かの為に尽くし、誰かの幸せを自分の喜びとする事ができる
これがタイプ4の成長の最終段階
タイプ4の「憧れ方向」はタイプ2
タイプ4はタイプ2の持つ慈愛の心に「憧れ」を持っています
しかし、憧れ(慈愛)に至る為には「現実を知り」「現実を楽しみ」「勉強し」「実力を身に付ける」と言う遠い道のりが必要です
裏面(タイプ9)の性格に支えられながら、表面(タイプ4)の性格を見失わずに「憧れのタイプ2(慈愛)」に向けて一歩一歩順を追って成長してくすずさんの成長を丁寧に描いた作品
それが「この世界の片隅に」の大きな魅力に繋がっているのだと思います
今回はここまで
まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います
疑問点などありましたら是非教えてください
この記事があなたの「創作活動」と「物語を楽しむ事」に少しでもお役に立てると嬉しく思います
みなさんの毎日が楽しく幸せなものになりますように!
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