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「エニアグラムの裏表」についての考察
今回は「主人公」が「裏の主人公」に勝利(敗北)するお話について考察します。
最近「裏の主人公」が気になってしかたありません。裏と表の主人公は一見正反対の性格。しかし2人は同一人物の裏表、心の葛藤を表しています。
今までのブログでは「主人公と裏の主人公が理解し合い、共に前に進んでいくお話」を多く紹介してきました。
しかし実は主人公が裏の主人公を否定し叩き潰すお話も多く存在しており、その典型的な形は「少年マンガ(アニメ)」に多く見られます。
※主人公「テーゼ」のパターンは18通り、今回は9w1(主人公:テーゼ)と5w4(裏の主人公:アンチテーゼ)に絞って考察を進めます。
【エニアグラムを知らない方はこちらから】
【今回取り上げる作品】
サカサマのパテマ
※上記作品のネタバレ有り。ご注意願います。
テーゼとアンチテーゼの関係
主人公をテーゼとすると、裏の主人公はアンチテーゼ、主人公と反対の立場。
今回考察を行う「9w1(夢見る人)の主人公」と「5w4(偶像破壊者)の裏の主人公」の性格は以下の通りとなります。
【主人公:9w1(夢見る人)】
「やさしさ(他人思い)(タイプ9)」と「正義(タイプ1)」をかざす主人公(テーゼ)。
【もののけ姫】
アシタカ:「モロ 森と人が争わずに済む方法はないのか?」
「もののけ姫」より Ⓒ 1997 Studio Ghibli・ND
主人公に対して、「理論(タイプ5)」と「自分勝手さ(個性・タイプ4)」で反論する裏の主人公(アンチテーゼ)
【もののけ姫】
モロ:「黙れ小僧!お前にあの娘の不幸が癒せるのか?森を侵した人間が、わが牙を逃れるために投げてよこした赤子がサンだ。人間にもなれず、山犬にもなりきれぬ、哀れで醜い、かわいい我が娘だ。お前にサンを救えるか?」
「もののけ姫」より Ⓒ 1997 Studio Ghibli・ND
「やさしさ(他人思い)」と「個性(自分勝手)」、「正義」と「理論」はそれぞれ相反する関係、物語の中ではお互いの考えが衝突します。
テーゼとアンチテーゼがせめぎ合う事によって物語はすすみます。しかしテーゼとアンチテーゼはどちらか一方が勝利してはいけません。それぞれが勝利した結末はどうなるのでしょうか?
テーゼが勝利するお話の爽快感
テーゼがアンチテーゼに勝利するお話は少年マンガ(アニメ)に多く見られ、分かりやすく爽快感があるのが大きな特徴。
【銀河鉄道999(劇場版)】
主人公:星野 鉄郎(ほしの てつろう)(9w1:夢見る人)
裏の主人公:機械伯爵(5w4:偶像破壊者)
ちょっと懐かしいアニメとなりますが、銀河鉄道999は「主人公」の鉄郎が「裏の主人公」の機械伯爵を倒すストーリー。
鉄郎は「生身の身体」を大切にしています。一方の機械伯爵は「機械の身体」に拘ります。二人の考えは正反対。裏と表の関係となっています。
機械伯爵は生身の人間が年老い醜くなって死んでいく姿が耐えられません。「年老いて壊れる儚い生身の身体」こそ機械伯爵にとっては諸悪の源、これ(生身の身体)さえ無ければ理想の世界が開かれると信じて行動しています。
5w4(偶像破壊者)は悪い「偶像」を「破壊」した先に真実があると信じ、破壊するために理想を根拠にして論破する。しかし攻撃性が高すぎて安息まで壊す恐れがあり、その回復には裏人格9w1が必要となる。
これは「悪と思われる偶像を破壊する事」によって理想の世界を求めようとする5w4の性格。
機械伯爵は鉄郎の母を殺し、その美しい姿を永遠に愛でる為にはく製として時間城の中に飾ります。鉄郎は母の敵討ちとして悪逆非道な機械伯爵と戦うのです。
鉄郎と機械伯爵はお互いの考えを理解し合うことなく争いを続け、最後は鉄郎(テーゼ:生身の身体)が機械伯爵(アンチテーゼ:機械の身体)に勝利します。鉄郎は機械伯爵を倒すだけでなく、最後は機械の身体をタダでくれる惑星メーテルを破壊するストーリー。少年マンガに多く見られる「テーゼがアンチテーゼに勝利する爽快感があるお話」が銀河鉄道999となっています。
もういくつか主人公が裏の主人公に勝利するお話を見てみましょう。
【サカサマのパテマ】
サカサマのパテマ(2013年劇場公開)は現在(2021年)じわじわと人気が上昇している「アイの歌声を聴かせて」の吉浦 康裕監督作品。物語には正義を夢見る主人公エイジに対して現実主義である裏の主人公イザムラが登場します。
主人公:エイジ(9w1)
サカサマのパテマより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
裏の主人公:イザムラ
サカサマのパテマより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
【サカサマのパテマの世界設定】
かつて地上で起きた大災害により、重力が逆転してしまった者(サカサマ人)は地下で生活することを余儀なくされている。当初は通常人類とサカサマ人との交流もあったが、時が経つにつれ次第に失われ、物語開始時点ではふたつの世界は断絶している。
サカサマのパテマより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
主人公のエイジはサカサマ人のパテマを守ろうとしますが、裏の主人公のイザムラはサカサマ人を排除しようとしています。二人はテーゼとアンチテーゼの関係。
イザムラ:「汚らわしいサカサマ人め 何故だ 何故お前は手放さない 汚れた罪人を!」
サカサマのパテマより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
イザムラはこの世を理想の世界へする為に日々努力しています。ただその努力の方向が間違えているのです。
イザムラ:「我々は同じ過ちを起こさないよう このアイガを築いたのだ」
サカサマのパテマより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
主人公は裏の主人公と対決、最後は主人公が勝利し、悪逆の限りを尽くしてきた裏の主人公は倒されます。
【崖の上のポニョ】
主人公:宗介(そうすけ)
裏の主人公:フジモト
崖の上のポニョも主人公、宗介が裏の主人公と戦い、勝利するお話となっています。
フジモト:「この井戸がいっぱいになった時、再び海の時代が始まるのだ カンブリア紀にも比肩する生命の爆発 忌まわしい人間の時代が終わるのだ」
「崖の上のポニョ」より © 2007 STUDIO GHIBLI Inc.
フジモトも機械伯爵やイザムラの様に高い理想を持っています。しかし2人と同じように、その方向は明らかに間違えています。
主人公の宗助は「海(ポニョ)と人(宗助)との共存(テーゼ)」を目指します。一方、裏の主人公のフジモトは「海を守るために人の存在を消そう(アンチテーゼ)」としています。
フジモト:「私と一緒に来てくれないか? ポニョも一緒に」
「崖の上のポニョ」より © 2007 STUDIO GHIBLI Inc.
物語の最後は宗助がフジモトに勝利して、ポニョと一緒に暮らすラスト。
上で紹介した3つのお話のラストシーンを見比べてみましょう。
【銀河鉄道999:ラストシーン】
「今万感の想いを込めて汽笛が鳴る 今万感の想いを込めて汽車は行く」
【さかさまのパテマ:ラストシーン】
「我が息子 お前の夢にも未来があるのかもしれんのう…」
サカサマのパテマ ラストシーンより ©Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013
【崖の上のポニョ:エンディング】
(ポーニョ ポーニョ ポニョ さかなの子
青し空からやってきた~♬)
「崖の上のポニョ」より © 2007 STUDIO GHIBLI Inc.
悪を倒し、希望に満ち溢れる未来を夢見てエンディングを迎える。これは「少年マンガ(アニメ)」の典型的なパターン。
しかし主人公は裏の主人公が抱え苦しんでいた「現実が抱える問題点」を解決した訳ではありません。とりあえず目の前に現れた苦しい「現実(アンチテーゼ)」を無視(裏の主人公を倒す)して「夢(テーゼ)」を優先する。問題解決自体は未来へ先延ばしするのが少年マンガ(アニメ)の終わり方。
ではその後、未来の世界で成長し大人となった主人公はどうなるのでしょうか?
「正義と平和を愛する少年」が成長した姿を描いたお話は宮崎監督作品の中に多くのパターンが見られます。
裏の主人公に勝利した後の主人公
主人公が少年から青年・大人になり「現実」の厳しさに直面した時、主人公が選ぶ道は以下の4通りがあります。
①:アンチテーゼを無視する
②:問題を先延ばしする
③:アンチテーゼに飲み込まれる
④:テーゼとアンチテーゼが共に成り立つ新たな道ジンテーゼを見つ出す
それぞれの物語を見てみましょう。
アンチテーゼへの向き合い方:その①
1つ目の方法はアンチテーゼを「無視」する方法。この姿は宮崎監督の紅の豚で描かれています。
【紅の豚】
主人公:ポルコ・ロッソ
紅の豚より © 1992 Studio Ghibli・NN
裏の主人公:フェラーリン(奥)
紅の豚より © 1992 Studio Ghibli・NN
夢を追い求める(テーゼ)ポルコと現実を生きる(アンチテーゼ)フェラーリンは表と裏の関係。
ポルコはフェラーリンからアンチテーゼを投げかけられます。
フェラーリン:「なあマルコ 空軍に戻れよ 今なら俺たちの力でなんとかする」
紅の豚より © 1992 Studio Ghibli・NN
しかしポルコはフェラーリンの言葉を無視して、現実(人間の世界)と向き合わずに夢の世界へ逃げ込みます。
ポルコ:「そういう事はな 人間同士でやりな」
紅の豚より © 1992 Studio Ghibli・NN
現実の苦しさ(アンチテーゼ)から目を背け、内面に逃げ込む。これが1つ目の方法。
アンチテーゼへの向き合い方:その②
2つめは「問題を先延ばしにする」方法。この姿は同じく宮崎監督の「もののけ姫」で描かれます。
【もののけ姫】
主人公:アシタカ
裏の主人公:モロ
もののけ姫のお話では主人公は現実での幸せを実現する事はできません。主人公は将来に向かって夢を抱く事でエンディングを迎えます。
サン:「アシタカは好きだ でも人間を許すことはできない」
アシタカ:「それでもいい サンは森で私はタタラ場で暮らそう 共に生きよう 会いに行くよ ヤックルに乗って」「もののけ姫」より Ⓒ 1997 Studio Ghibli・ND
主人公は問題(アンチテーゼ)を受け入れるものの、その解決には及びません。問題の解決を先延ばしする事で当面の解決を計ります。
アンチテーゼへの向き合い方:その③
第3の道、それは主人公が「裏の主人公」に取り込まれる道。その姿はどうなるのか、2つの作品の例を見てみましょう。
【風立ちぬ】
主人公:堀越 二郎(ほりこし じろう)
裏の主人公:カプローニ
風立ちぬでは主人公のテーゼ「やさしさ」と「正義」は裏の主人公のアンチテーゼ「理論」と「自分勝手さ」に粉砕されます。
カプローニ:「君の10年はどうだったかね?力を尽くしたかね」
二郎:「はい 終わりはズタズタでしたが」
カプローニ:「国を滅ぼしたんだからな」
物語のラストでは主人公は完全に裏の主人公に取り込まれています。
【Fate/stay night(セイバールート)】
主人公:衛宮 士郎(えみや しろう)
裏の主人公:アーチャー
Fate/stay night(セイバールート)では主人公の士郎は厳しい現実と向き合う事で闇落ちしてしまいます。
アーチャー:「正しい救いを求めれば求めるほど お前は自己矛盾に食い尽くされる ただの殺し屋に成り下がる それが分からないのなら 死ね その思想ごと砕け散れ!」
Fate/stay night [Unlimited Blade Works] 21話より ©TYPE-MOON・ufotable・FSNP
主人公が裏の主人公に負けた状態の物語は「現実の世界」の勝利。そこでは主人公は無気力、又は闇落ちした状態となり、「夢(理想)の世界」は否定(または無視)され、悪夢の状態に放り込まれます。
アンチテーゼへの向き合い方:その④
4つ目の道はテーゼとアンチテーゼが共に満足できる新たな方法、ジンテーゼを見つける道。
ジンテーゼを実現する方法、それは「相手を赦し、共に困難に立ち向かう事(相手を受け入れる事)」。
方法自体はとてもシンプルで簡単ですが、その実現はとても難しい事が銀河鉄道999を例にとると分かります。
鉄郎がジンテーゼを見つけ、実現する為には憎い機械伯爵を赦し、彼の苦しみを受け入れ「共にその悩みを解決していく」道を選ぶ必要があります。
鉄郎が機械伯爵を赦す事がどれだけ困難なのかは容易に想像できます。しかしその道にしかジンテーゼに繋がる正解はありません。
鉄郎は機械伯爵と協力する事によって始めて一人では解決できなかった問題を乗り越える事ができる様になるのです。
「相手を赦す(受け入れる)」為には「相手を赦す心の広さ」と、「相手を受け止める事の出来るだけの実力」が共に必要とされます。その2つを得る為に長い長い物語の中で主人公は成長していく必要があるのです。
【「主人公と裏の主人公と分かり合えるお話」の解説はこちら】
今回分析をしていて、宮崎監督作品が少年が成長した後のパターンを順番に物語化している事が発見できて、とても興味深かったです。
宮崎監督が制作中の次回作はこれまでの作品でまだ描かれていない「ジンテーゼを見つけるお話」になって欲しいですね。
今回はここまで。
まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います
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