雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
こんにちは
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がんべあです。
今回は「雨を告げる漂流団地」のお話を13フェイズ構成で分析していきます。
久しぶりの13フェイズ記事。ちょっと複雑な物語で分析していて面白かったです。
※ネタバレ全開です。ご注意を!
【13フェイズを知らない方はこちらの記事をどうぞ】
「雨を告げる漂流団地」の主人公は熊谷 航祐と兎内 夏芽の2人。2つのお話は複雑に絡み合いながら進行していきます。分析していて物語構成の見事さに驚かされました。 詳しく見ていきましょう。
13フェイズ作品の重要ポイント
13フェイズのお話を分析する際に最初に確認しておくべき重要なポイントがあります。
それは次の2つ
「①:主人公の抱える問題点」
「②:主人公を助け導く存在」
13フェイズの物語を考察する時にはこの2つが最重要ポイント。これさえ見つかれば7割以上の分析は終わった様なイメージを持っています。
しかし意外とこの作業が難しく、分析を進めていくと思いもよらなかった「主人公の問題点」や「助け」を発見する事があってとても楽しいのです。
①:主人公の抱える問題点
13フェイズのお話はどれも物語の当初「主人公が抱えている問題点」を「成長」によって物語の終わりにはその問題を解決すると言う流れで作られています。
※問題を解決できずに破滅してしまうバッドエンドのお話もありますが…。
熊谷 航祐と兎内 夏芽の2人が物語の当初で抱えている問題点を見てみましょう。
まずは1人目の主人公熊谷 航祐から分析していきます。
【熊谷 航祐(くまがや こうすけ)】主人公①
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
物語の当初、航祐の抱えている問題点は「自分に夏芽を助ける力が無い事 そして夏芽を傷つけた事を謝れていない事」。
航祐:「俺の方が最低だ」
夏芽:「何で? そんな…」
航祐:「違う 夏芽が大変だったって知ってたのに 俺 何もできてねえし しかもあんな事言って 傷つけた…」
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航祐が成長する事で”抱えていた問題”を解決する(力を身に付けて夏芽を助け謝る事)物語が「雨を告げる漂流団地(航祐サイド)」のお話の基本構成となります。
次はもう一人の主人公、夏芽について見てみます。
【兎内 夏芽(とない なつめ)】主人公②
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
夏芽の抱える問題点は「現実世界に安心できる(素直に甘えられる)場所が無い事」。
夏芽:「私は本当は泣き虫だよ 知ってるでしょ うちの家族は大変だったからさ あたし泣いてばっかだもん でもさ 泣いても泣いても何にもならなくて 全部バラバラのままで だからあの時にはもう何にも欲しがらない様にしてた…」
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夏芽が成長する事で”抱えていた問題”を解決する(現実世界に安心できる場所を見つける事)物語が「雨を告げる漂流団地(夏芽サイド)」のお話の基本構成となります。
13フェイズの物語の分析では主人公が抱えている問題点を見つけ出す工程がとても大切。
作者は物語の中で主人公の問題点をあえて見つかりにくいように描く事が多いので、意識して捜さないとなかなか見つからない事が多いのです。
②:主人公を助け導く存在
13フェイズの物語の2つ目のポイントは「主人公を助け導く存在」。
先ほど書いた通り主人公は物語の最初で大きな「問題点」を抱えています。
それは一人では解決する事ができないもの。
問題を解決する為には主人公を助け導く存在が必要となります。
13フェイズのお話は前半と後半に別れており、それぞれ以下の流れで作られています。
①大きな問題を抱えている主人公。
②【物語前半】では「誰かの助け・導き」によって主人公は成長し問題解決へと近づきます。
③【物語後半】では成長した主人公が、今度はその「助けなし」で、一人で真の問題解決を達成していくお話にシフトチェンジします。
熊谷 航祐の物語
「航祐サイド」の物語で主人公を助け導く存在、それはのっぽ君。
物語の前半では熊谷 航祐は(夏芽が大変だった時に助けになれなかった)自分の不甲斐なさに自己嫌悪しています。
そんな航祐を助け導くのがのっぽ君。
【のっぽ君】
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物語の前半、第7フェイズまでは航祐はのっぽ君に助けられて、次第に夏芽との距離を縮める事ができます。
のっぽ:「やっぱり夏芽には航祐君が必要だよ」
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そして成長した航祐は物語後半、第8フェイズからはのっぽ君の助けなしで夏芽の信頼を勝ち取っていく形に変化したお話となります。
航祐:「行っくぞぉ」
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
兎内 夏芽の物語
「夏芽サイド」の物語で主人公を助け導く存在、それは熊谷 航祐と安じいの2人(新しい家族)。
物語の当初では兎内 夏芽はもう何も欲しがらない様に心を閉ざしています。
夏芽:「泣いても泣いても何にもならなくて 全部バラバラのままで だからあの時にはもう何にも欲しがらない様にしてた…」
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
そんな夏芽を助け導くのが(新しい家族となる)熊谷 航祐と安じい。
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
13フェイズの物語の前半、第7フェイズまでの夏芽は航祐と安じいに助けられて閉ざされた心を次第に開く事ができます。
夏芽:「一緒に学校行って 一緒にサッカーして 全部楽しかった それだけでもあたしは幸助と一緒で良かったなぁって」
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夏芽:「こっちの方が本当の家族っぽいなって思ったくらいだもん」
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
しかし第8フェイズ以降の物語後半からは安じいと死に別れ、航祐とも疎遠になり、一人で前に進まなくてはならなくなります。
13フェイズの物語では物語の前半(第7フェイズまで)に主人公の成長を助け導いてくれた存在が物語の後半(第8フェイズ以降)いなくなり、主人公は一人で成長しなくてはならない構成となっているのが特徴となっています。
夏芽:「もうお別れなんて…もう嫌だよう!!」
雨を告げる漂流団地 より ©コロリド・ツインエンジンパートナーズ
もう何も欲しがらない(誰にも助けを求めない)と心を閉ざしている夏芽。
物語後半は安じいと航祐の助けを借りない一人っきりの状態で夏芽が成長していく(素直な気持ちで誰かを頼る事できる様になる)物語となります。
夏芽:「私が 私なんかいなくなった方がいいんだ でも でも怖い 怖いよぉ…」
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そして航祐と夏芽、二人の主人公の織りなすストーリーは「重なり合いながら」進んでいきます。その構成が実に見事。詳しく見ていきましょう。
物語の全体構成
「雨を告げる漂流団地」は「熊谷 航祐の第1フェイズ」と「兎内 夏芽の第8フェイズ」から始まる構成。
夏芽の第1~7フェイズは物語の途中で回想シーンとして描かれています。
13フェイズの物語で発生する(第①~⑬フェイズの)出来事は必ず時系列に沿った展開の必要がありますが、それを再構成して視聴者へ見せる順番は自由にできます。
アニメ本編は2人のお話を再構成する事で複雑な作りとなっています。
解りやすくする為に物語で描かれている2人のお話の出来事を並べてみました。
「雨を告げる漂流団地」は子供でも分かる単純明快な娯楽作品ではなく、ちょっと考えさせられるストーリー展開。その為、初見では正確な物語構成が解りにくい構成となっています(悪口ではなく、それが実によい効果となっています)が、こうして物語を分解してみると13フェイズに則った「単純なお話」の組み合わせなのが分ります。
物語を創作する際には是非13フェイズの構成を考えてみてください。とっても便利ですよ。
終わりに
二人の主人公が抱える問題点を解決するのが物語の基本構成。
航祐はどのようにして「夏芽(の心)を救う事」ができるのか、夏芽はどのようにして「安心できる自分の居場所を見つける事」ができるのか、それは本編を観て確認してください。
とっても素敵でおススメのアニメです。
今回はここまで。
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まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います。
疑問点などありましたら是非教えてください。
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みなさんの毎日が楽しく幸せなものになりますように!
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