ヴァイオレット・エヴァーガーデン」第3話より ©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
こんにちは
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がんべあです
今回は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の第3話「あなたが、良き自動手記人形になりますように」を13フェイズ分析します
(※4話以降のネタバレはありません。すでに3話まで観ている方はご安心してお読みください)
ヴァイオレット・エヴァーガーデン第3話の内容はヴァイオレットの通う「自動手記人形育成学校」でのお話
そこでヴァイオレットはルクリアと出会います
兄に対してその気持を伝えることができず、長い間苦しんでいるルクリア
しかし彼女はヴァイオレットと出会うことで「ずっと告げることができなかったその想いを伝える事ができる」と言う感動満載のストーリー
夕日に照らされた街の風景は感無量でした
13フェイズとは?
「13フェイズ」とは「起承転結」とか「序破急」「三幕構成」などと同じく「お話の構成」を表した名称
特徴は「13のフェイズに分かれた構成」
各フェイズで描かれるパターンは決まっています
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の第3話「あなたが、良き自動手記人形になりますように」は、ほぼ13フェイズに従ったお話になっています
13フェイズに沿って話を観ていくと色々な発見があって面白いのです
最初に基本的な13フェイズの流れを確認しましょう
【13フェイズのストーリー構成】
【第1幕】(対立)
①【日常】主人公の日常、抱えている「問題」
②【事件】事件の発生、日常から引き離される
③【決意】新たな状況へ飛び込んでいく決意
【第2幕】(葛藤)
④【苦境】新たな状況での様々な苦境
⑤【助け】苦境に陥った主人公に助けが現れる
⑥【成長・工夫】助けを得た主人公の成長・工夫
⑦【転換】成長による成果、中盤の盛り上がり
ここまでが前半
⑧【試練】後半は助け無し、主人公は単独で試練に立ち向かう事に
⑨【破滅】主人公の頑張りも届かず状況は一層悪化、破滅が襲います
⑩【契機】破滅を乗り越えるきっかけを掴む主人公
【第3幕】(変化)
⑪【対決】敵との最終対決
⑫【排除】敵を排除
⑬【満足】主人公の抱える問題の解決
物語の構成には色々な方法がありますが、「王道の感動」ができるのはなんと言ってもこの13フェイズで創られたお話だと私は思っています
第3話の主人公は誰?
すでに作品をご覧になった方に質問です
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン第3話のお話の主人公は誰でしょうか?」
少し考えてみてください
「第3話の主人公は一見”ルクリア”にも思えます」
ルクリアはこのお話の語り部となっており、彼女の抱え込んだ苦しみがお話を通じて最後に解決します
その為、ルクリアが主人公かと思ってしまうのも無理はありません
しかし、13フェイズでこのお話を詳しく分析してみると主人公がヴァイオレットである事が分かります
では、順を追って観ていきましょう
13フェイズでのお話の流れ
【第1幕】
第1フェイズ【日常】
心を手紙に載せることができないヴァイオレット
エリカ:「彼女…ヴァイオレットはタイプは正確で早いですし、宛名書きや名簿の作成と言った業務はこなせます
そのうち、もっといろんな事を知って…手紙も少しずつ書けるようになると思います」
(第2話「戻ってこない」より)
第1フェイズの日常は第3話冒頭では描かれていません
ここは視聴者に想像してもらう形式をとっています
しかしそれまでのお話(第2話)を観ていると容易に想像する事はできます
一人前の自動手記人形を目指すヴァイオレットの日常
ヴァイオレットの問題点は「心を手紙に載せることができないこと」
第2フェイズ【事件】
カトレアの勧めで自動手記人形育成学校に行く事になる
カトレア:「そうだわ!ヴァイオレット、貴女ドールの育成講座に通ってみない?短期の講座もあるし、アイリスも通ってたのよ」
(第2話「戻ってこない」より)
第2フェイズの「事件」にいたる経過も3話冒頭では直接描かれていません
しかし、こちらも第2話のカトレアのセリフから、その経緯を想像する事ができます
第1、第2フェイズが省略されている事
(第2話にヒントが盛り込まれている)
これも3話の主人公がヴァイオレットである事が解りにくくなっている理由の一つ
これを冒頭でしっかり描くとヴァイオレットが3話の主人公であることが誰でも分かってしまいます
第3フェイズ【決意】
最初の授業での敬礼
先生: 「本校卒業の証は一流の証明
しかし、私が良きドールと認めない限りこの証は決して与えられません。覚悟は良いですか?」
ヴァイオレット:「了解しました」
第3話はいきなりここ第3フェイズから始まります
自動手記人形育成学校で学ぶ決意をヴァイオレットは敬礼の姿勢で表します
その姿に見惚れるカトレア
カトレア:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン。その子の立ち居振る舞いはお人形の様な服装とは掛け離れた…まるで、軍人さんの様でした』
【第2幕】
第4フェイズ【苦境】
第5フェイズ【助け】
第6フェイズ【成長・工夫】
30分の短いお話と言うこともあるのでしょうか
第4~6フェイズはかなり凝縮されています
ヴァイオレットはルクリアとペアで手紙を代筆する課題を受けます
『拝啓父上様、母上様。久々の手紙ですが伝達事項はありません。以前からの件に感謝を伝えていないことを懸念しております。一緒に行った場所、行きたかった場所に関して、伝えるべき情報は無し』
『当方は現在、鋭意努力中。状況は健康無事。問題は起きておりません。以上くれぐれも憂慮無きよう。ルクリア』
しかし出来上がった手紙はこの様な有様
まるで報告書みたいな文章となってしまいます
先生:「ヴァイオレット、貴女は学科の成績も良くてタイプもとても速くて正確です。けれど貴女の代筆したものは手紙とは呼べません」
ヴァイオレット:「手紙とは…呼べない」
出来上がった手紙をじっと見つめるヴァイオレット
心を手紙に載せることができないヴァイオレット、それを励まし助けるルクリア
そしてルクリアと兄との関係を知るヴァイオレットが短い間で描かれます
第7フェイズ【転換】
考え込むヴァイオレットをルクリアが励ましてくれます
ルクリア:「ねえ。この街で一番素敵な景色、教えてあげる!」
街の中にある時計塔に登る2人
夕日に照らされた美しい街並み
ルクリア:「素敵でしょ?私は子どもの頃からずっと…この眺めが大好きなの」
ギルベルト:「ヴァイオレット…いつか君にも…ライデンから見えるあの美しい景色を見て欲しい」
その光景を観てギルベルト少佐の言葉を思い出すヴァイオレット
閉ざされていた彼女の心が、ざわめきと共に動き出します
第7フェイズは中盤のクライマックス
美しい街並みとヴァイオレットと少佐との思い出がカバードピークとして描かれます
ここまでが前半
前半はルクリアの助けで前に進んできたヴァイオレット
後半は逆にルクリアを助けるお話にシフトチェンジします
第8フェイズ【試練】
ヴァイオレットは卒業バッジをもらえませんでした
ホッジンズ:「そうか…残念だったね」
ヴァイオレット:「申し訳ございません…」
クラウディア:「大丈夫…卒業できなくてもドールになれない訳じゃないし」
第9フェイズ【破滅】
心を手紙に載せることができない
思い悩み、絶望しそうになるヴァイオレット
ヴァイオレット:「言葉をすくい上げられないのではドールの意味がありません あの方に何を伝えたいのか自分でも分からないのです 」
第10フェイズ【契機】
そんなヴァイオレットの元にルクリアが姿を表します
ヴァイオレット:「学校は終了したのになぜここに居るのですか?」
ルクリア:「うーん、ここに来ればまた貴女に会えるかなって思って」
そしてルクリアはヴァイオレットに自分の過去を語ります
ルクリア:「心を伝えるって難しいね…。実はね、私の両親死んじゃったの。残った家族はお兄ちゃんだけ…
私、お兄ちゃんになにを言えば良いか…分からないの」
泣き崩れヴァイオレットの元から逃げるように走り出すルクリア
ルクリア:「ありがとうヴァイオレット…少佐への手紙はまた今度ね」
その姿を見送るヴァイオレットは自身の絶望を抜け出し再び動き始めます
【第3幕】
第11フェイズ【対決】
ヴァイオレットはルクリアの手紙を代筆し兄に手渡しします
兄:「女?アンタ、ルクリアの…これは…」
ヴァイオレット:「任務…いえ、課題です。
いえ…手紙です。ルクリアから貴方宛ての」
兄:「ルクリアから…」
第12フェイズ【排除】
ヴァイオレットの代筆した手紙
「お兄ちゃん、生きて…来てくれて」
「嬉しいの…ありがとう」
その手紙を読み、泣きじゃくる兄の姿とそれを見つめるヴァイオレット
第13フェイズ【満足】
卒業バッジをもらうヴァイオレット
ヴァイオレットは「人の心を手紙に載せる」ことができたのです
先生:「おはようヴァイオレット」
ヴァイオレット:「教官…学校は終わったはずでは」
ルクリア:「ゴメンね。私が勝手にお願いしたの」
先生:「この手紙をルクリアに見せて貰いました。貴方が書いたルクリアからお兄さんへの手紙を」
ルクリア:「ずっと言えなかったお兄ちゃんへの想い…ヴァイオレット、貴女が届けてくれたのよ」
先生:「良きドールとは人が話している言葉の中から伝えたい本当の心を掬い上げるもの
貴女は今、その一歩を踏み出したのです
ヴァイオレット。貴女が良きドールになりますように」
ルクリア:「ヴァイオレット!おめでとう!」
ヴァイオレット:「ルクリア…」
ルクリア:「それから…本当にありがとう」
どうでしたでしょうか?
省略された部分もありますが、13フェイズの流れに沿って主人公であるヴァイオレットの物語が進められています
このお話は13フェイズの応用なのでしょう
順を追って13フェイズに従い、きちんとお話を進めると、とても分かりやすいストーリーが創れます
しかしその一方、分かりやすさが故に、情感的に物足りない部分(分かりにくさ=情緒・余韻・深み とでも言うのでしょうか)が出てくるのが弱点
今回の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」第3話は、語り部(ルクリア)と主人公(ヴァイオレット)が別れて描かれており、更に13フェイズのいくつかを省略・簡略化しています
そうやって、敢えて「ストーリーラインを解りにくくする」事で、視聴者の情感に訴え、物語の奥行きを出している
そんなテクニックなのだと思います
では今回はここまで
まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います
疑問点などありましたら是非教えてください
この記事があなたの「創作活動」と「物語を楽しむ事」に少しでもお役に立てると嬉しく思います
みなさんの毎日が楽しく幸せなものになりますように!
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