魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
こんにちは
みんなと一緒に幸せになりたい
がんべあです
この作品は1989年(平成元年)公開映画
この作品の13フェイズ解説は2回目
【前回記事】
今回、改めてこの作品の解説を書こうと思ったキッカケはオタキング岡田斗司夫さんの動画を見たからです
この動画の中の「キキがジジと話ができなくなった理由」の分析にとても感銘を受けてしまいました
今回はこの点に注目して前回とは違う切り口での13フェイズ解説を行います
【13フェイズって何という方はこちらで確認ください】
では本編の解説に入りましょう
※「」は引用部分
引用は全て「魔女の宅急便」から
ネタバレありですのでご注意ください
お話の構成とミスリード
キキは何故ジジと話をする事ができなくなったのか?
その理由は物語に仕掛けられた「ミスリード」のおかげで見えにくくなっています
この謎を解き明かすポイントは「お母さんのくれた箒」
では13フェイズに従って詳しく見ていきましょう
13フェイズのお話は「主人公が抱える問題点」を「成長」によって解決していく流れでできています
キキの抱える問題点は「一人前でない事」
そして物語の中でキキは成長をする事でこの問題を解決するお話となっています
13フェイズ構成のお話では「前半何かの助け」で成長する主人公が、後半は「その助けなし」で成長する構成となっています
黄色の枠、第7フェイズまでキキはお母さんの箒の助けを得ながら宅急便を始め、様々な人達と知り合い、交流を深め成長していきます
そして第8フェイズからはキキはお母さんの箒の助け無しで成長していくお話となります
キキの嫌な心(暗黒面)を表す存在ジジ
キキは実に良くできた娘、心の中に潜む暗黒面は一見物語の中では描かれていません
そんなキキの代わりに悪態をつく役割が猫のジジ
本編でのジジが他人に向かって悪口を言う3つのシーンを詳しく見てみましょう
①【先輩魔女に対して】
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
先輩魔女:「あなたもがんばってね」
キキ:「ハイ!」
先輩魔女:「じゃあねー」
ジジ:「ヤな感じ あの猫 見た?
ベー」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
②【向かいの綺麗なお姉さんに対して】
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
キキ:「ジジ 海が見えるよ」
ジジ:「明日 他の町を探す?
アッ!(ジジが向かいの家の窓にいる女の人に気付く)
チェッ チェッ 気取ってやんの!」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
③【荷物の届け先のお嬢さんに対して】
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
お嬢さん:「私 このパイ キライなのよね」
ジジ:「今の本当にあの人の孫?
ベッ!」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
ジジが悪態を付くのはいずれもキキより美人で世の中で成功している女の人ばかり
そしてジジが悪態を付く時のキキは決まって無表情、キキの中から全く感情が消えて無くなっているように感じます
キキは「世の中に出たばかりで力を持たないこと」、「黒い地味な服装で可愛くないこと」の両方にコンプレックスを持っています
キキ:「黒猫で黒服で真っ黒クロだわぁ…」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
これらのジジの悪態は「綺麗な人、成功している人(自分が持っていない力を持っている人)」に対するキキの嫉妬心を代弁する声だと考えると非常に納得がいきます
どうしていいのか解らず、無表情になっているキキの代わりにジジが感情をぶち撒けているのです
ではなぜジジがキキの声を代弁しているのでしょうか?
魔法の力?
いえそれは魔法でも何でも無く、現在の普通の人にも起きる現象、 ジジはキキの「イマジナリーフレンド」なのです
イマジナリーフレンド(ピクシブ百科事典より)
直訳すると『空想の友人』。
その名の通り、本人の空想の中だけに存在する人物であり、空想の中で本人と会話したり、時には視界に擬似的に映し出して遊戯などを行ったりもする。
自分自身で生み出した友達なので、本人の都合のいいように振る舞ったり、自問自答の具現化として、本人に何らかの助言を行うことがある。反面、自己嫌悪の具現化として本人を傷つけることもある。
人間関係という概念に不慣れな幼い子供に起こりやすい現象であり、特にアメリカでは多くの子供がイマジナリーフレンドを持つ。しかし現実の対人関係を学ぶことで、殆どの場合は幼少時に自然に消滅するため、イマジナリーフレンドを「忘れる」ことは、子供が健全に成長するための通過儀礼であるとも言える。
ジジの声が聞こえるのはキキ唯1人、キキのお母さんやお父さんさえもジジとの会話場面は一切描かれていません
キキはジジに代弁させることによって「自分の中にある嫌な心」から目を逸し良い子を演じています
そしてキキがジジの声が聞こえなくなるのはキキがトンボの友達に対しての嫉妬心を声に出した直後
トンボ:「行こう みんなに紹介するから」
キキ:「行かない さよなら」
トンボ:「なんだよ!? ねえ なに怒ってんの?」
キキ:「怒ってなんかいないわ 私は仕事があるの ついて来ないで」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
ジジ:「ニャー」
キキ:「ジジ 私ってどうかしてる?
せっかく友達ができたのに急に憎らしくなっちゃうの…
素直で明るいキキはどこかに行っちゃったみたい」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
キキ:「つめたいの… 」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
キキは物語前半、知らない街で宅急便を始める事で人間的に成長します
その結果、キキは成長し、トンボに向かって本当の心の声(嫉妬心)を表に出す事ができました
そして心の声をジジに代弁してもらう必要が無くなったキキはジジと話す事ができなくなったのです
物語に仕掛けられたミスリード
今回の13フェイズ分析のポイントは前半キキを助けてくれる存在が「お母さんからもらった魔法の箒」であることです
アニメの途中でキキの魔法の力が無くなったと思われる展開になりますが、これはミスリード
その仕掛けはお母さんのコキリがキキに箒を与える所から始まります
コキリ:「あなた そのホーキで行くの?」
キキ:「うん かわいいでしょう」
コキリ:「ダメよ! そんな小さなホーキじゃ
お母さんのを持って行きなさい」
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
キキの魔法の力はもともと頼りなく、お母さんからもらった魔法の箒の力でなんとか空を飛ぶことができていました
トンボとのケンカの後、空を飛べなくなったのはただ単に心が乱れた状態だったから
本格的に空を飛べなくなったのは、お母さんからもらった箒を折ってしまってからになります
キキが「空を飛べなくなる」事と「ジジとの会話ができなくなる」なる事を同時に見せる事で、それらの原因が同じもの(魔法の力が無くなった為)だとミスリードさせる物語構成になっているのです
しかしキキが「ジジの声が聞こえなくなった」のは、キキの成長によってイマジナリーフレンドの必要が無くなった為
「空を飛べなくなった」のはお母さんの箒が折れてしまった為でありどちらのキキの魔力が無くなった事が原因ではありません
前半はジジの助けを得ながら成長するキキ、後半はジジの助けなしで成長していくキキのお話と考えた13フェイズ構成の物語でも成立しますね
物語のラストシーン、キキの肩に飛び乗ってくるジジを笑顔で迎えるキキ
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
しかし"ニャー"とネコの声で鳴くジジの様子を見て一瞬戸惑いの表情を見せます
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
そしてそのジジの姿を受け入れ、優しい目でジジを見つめて頬ずりする、このたった数秒の描写でキキの精神的に成長した姿が見事に表されています
魔女の宅急便より ©1989 角野栄子・Studio Ghibli・N
宮崎監督の作品はホント二重三重の重層的な作りになっていて、何度見ても新しい発見があって飽きません
今日はここまで。
この記事が「イイナ」と感じたら下の【B!ブックマーク】ボタンを押して応援していただけると励みになります。
まだまだ勉強不足で、勘違いや、解説に至らぬ点も多くあると思います
疑問点などありましたら是非教えてください
この記事があなたの「創作活動」と「物語を楽しむ事」に少しでもお役に立てると嬉しく思います
みなさんの毎日が楽しく幸せなものになりますように!
【関連記事】gunber.hatenablog.com
【参考資料】
新品価格 |
新品価格 |
中古価格 |
新品価格 |
新品価格 |